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起業物語Re25 生い立ち

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師匠の教え──26年経っても色あせない人生の礎

自分には、人生の大切な節目で出会った「師匠」と呼べる人がいる。

出会ったのは、今から26年前。自分が20歳の頃、ファミリーレストランの厨房でアルバイトをしていた時のことだった。
当時は、バスケ部を辞め、目標も夢も見失って、フラフラと日々をやり過ごしていた頃。
ひょんなきっかけから始めたそのアルバイトで、厨房の正社員として働いていた30代くらいの男性がいた。

その人が、のちに「師匠」と呼ぶことになる人だった。


第一印象は、正直かなり怖かった。

なぜかいつも焼き鳥の串を持っていて、仕事中にミスをするとその串で太ももをグサリと刺してくる。
今で言えばパワハラなんて言葉では済まされないような荒っぽいやり方だったけれど、なぜかその人の言葉には不思議な説得力があった。

口調はぶっきらぼうで、厳しい。
でも、芯がある。
目が本気だった。

毎日のように怒られ、串に刺されながらも、なぜか自分はその人から離れられなかった。


そんなある日、仕事終わりの喫煙所でこんなことを言われた。

「お前、頭じゃなくて心で覚えろ」
「仕事ってのは、人を感動させることなんだよ」
「金のために生きるな、生きるために金を使え」

その一言一言が、まるで胸の奥に直接打ち込まれるようだった。

当時の自分は、ただ「お金を稼ぐためにバイトしているだけ」だった。
だけど師匠は、目の前の皿洗いひとつに命をかけろと言ってくれた。

「雑用でも10億のプロジェクトでも、本質は一緒だ。
人を喜ばせて、人を驚かせて、初めてお金をもらえるんだよ」

あのときの会話は、今でもはっきりと思い出せる。
それくらい、自分にとって衝撃だった。


師匠から教わったことは、数えきれない。

  • 頭で考えるな、心で動け
  • ご縁を大切にしろ
  • 人の期待を超えないと、心は動かせない
  • 金のために働くと、金に使われる
  • 感動を与えることが、仕事の本質だ

言葉だけなら、どこかの自己啓発本にも載っていそうだけど、師匠が違ったのは「その通りに生きていた」ことだ。
そして、それを厳しさの中にも温かさをもって、自分に伝えてくれたことだ。


自分はその後、道を変え、社会に出て、ビジネスの世界で奮闘するようになった。
会社を立ち上げ、経営者としての視点も持つようになった。

でも、何かに迷ったとき、原点に立ち返りたくなったとき、思い出すのはあの頃の師匠の言葉だ。

「人を感動させない仕事は、仕事じゃない」

その言葉は、今の自分の中に深く刻まれていて、何よりも大切な指針になっている。


26年たった今でも、師匠の連絡先は知らないままだ。
当時はまだ携帯電話がようやく普及し始めた頃で、住所も番号も知らずに、バイトを辞めた後は自然と疎遠になってしまった。

だけど、毎日クシで刺されて、毎日怒られて、毎日学ばせてもらった時間は、何よりも濃密だった。

人生において、あれほどまでに自分の“心”を揺さぶってくれた大人には、あれ以降出会っていない気がする。


ふと思う。
師匠、あなたは今、どこでどうしているんでしょうか。
焼き鳥屋を開くという夢、叶えましたか?
もしその店がどこかで営業しているなら、いつか行ってみたいです。
その時は新品のクシでお願いしますよ。

26年前のあの時間は、今も自分の中でしっかり生きています。
そして、これからも人生の中で何度も思い出すでしょう。
あの教えが、自分の人生の背骨になっていることを信じて。

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この記事を書いた人

石川信孝
茨城で建設会社を経営しています
工具はマイナスドライバー1本しか持っていません

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