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起業物語Re80 再起編

目次

退職という決断

社長に就任してわずか1カ月。

そしてその2カ月後、自分は会社を去る決断をした。

振り返ると、自分でも驚くような展開だった。

会社を立て直そうと思い社長を引き受けた。

赤字続きだった会社を少しでも良くしたい。

働いている社員や支えてくれている協力会社のために何かできないか。

そんな思いで引き受けた役職だった。

しかし現実は違った。

経営を任せると言われながらも任せてもらえず、過去のしがらみや感情論に振り回され続けた。

そして最後には、自分とは無関係な家庭問題にまで巻き込まれることになった。

自分の中で何かが切れてしまった。

これ以上ここにいても誰も幸せにならない。

そう判断した。


退職を決意した後、まず考えたのは社員のことだった。

そしてクライアントや協力会社様のことだった。

当然、自分が辞めることで影響は出る。

だからこそ、きちんと説明をして回るべきではないかと現社長へ相談した。

しかし返ってきた答えは意外なものだった。

「説明しなくていい」

とのことだった。

そのため、自分から退職を伝えたのは本当に必要最低限の人だけだった。


退職までの2カ月間は、できる限りのことをやった。

引継ぎノートを作り、

業務マニュアルを作成し、

属人化していた仕事を少しでもわかりやすく整理した。

営業管理。

総務。

設計補助。

置局業務。

クライアント対応。

採用関連。

協力会社対応。

自分でも驚くほど多くの業務に関わっていた。

辞めることは決まっていたが、最後まで責任だけは果たしたかった。


ありがたいことに、その間は多くの人から声を掛けてもらった。

「辞めないでくれ」

「何とかならないのか」

「本当に辞めるのか」

そんな言葉を何度もいただいた。

もちろん詳しい経緯は説明していない。

だが、周囲の人たちも何となく感じていたのだと思う。

会社の中で何かが起きていることを。

そして自分が辞めることでどれほど大きな影響が出るのかを。

最後の頃には現社長ですら、

「辞めないでくれ」

と言葉にはしないものの、そんな空気を出していた。

しかし、自分の決意が変わることはなかった。


思えば入社して7年。

本当に多くのことを学ばせてもらった。

建設業界の知識。

通信工事の知識。

営業。

現場管理。

総務。

採用。

労務。

経営。

そして何より、人について学んだ。

理不尽な要求。

感情論で動く組織。

ブラック企業と呼ばれる環境。

人が辞めていく会社の特徴。

人が傷つく言葉。

人がやる気を失う瞬間。

経営者がやってはいけない行動。

本当にたくさん見てきた。

嫌なことも数え切れないほどあった。

正直、思い出したくない出来事もある。

それでも、自分はこの7年間を無駄だったとは思いたくない。


やられて嫌だったことは人にしない。

理不尽な思いをしたなら、自分はそうならない。

月200時間を超える残業も経験した。

休日がなくなることもあった。

精神的に追い詰められたこともあった。

だが、その経験のおかげで人より多くの業務を覚えることができた。

人より多くの失敗も経験できた。

すべてをプラスに変える。

その考え方だけは失いたくなかった。


そして退職の日が近づいてきた。

次の就職先は決まっていなかった。

むしろ何も考えていなかった。

人生で初めての本格的な就職活動。

少し休みながら、自分のこれからを考えてみよう。

そんな気持ちだった。

一カ月くらいはのんびり過ごそう。

本気でそう思っていた。

だが、自分の人生はそんなに穏やかには進まない。

退職後、ようやく休めると思った矢先。

またしても予想もしない出来事が起きる。

そして自分は、さらに大きなうねりの中へ巻き込まれていくことになるのだった。

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この記事を書いた人

石川信孝
茨城で建設会社を経営しています
工具はマイナスドライバー1本しか持っていません

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