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起業物語Re26 社会人編

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社会人編:レジ打ちからはじまった社会人生活

大学を卒業したものの、自分には“社会人”という実感がなかった。

就職活動は一切しなかった。
これまでの人生でも“就活”というものを一度も経験したことがない。
理由は単純で、卒業後もそのままファミレスでアルバイトを続けていたからだ。

そこには、あの“串を持った師匠”がいた。
あの人の下で働くことは、ただのバイトではなく人生そのものの学びだった。
スーツを着て内定をもらうより、心を鍛えられる実感があった。
だから、焦りも後悔もなかった。


そんなある日、大学時代の同期、Mくんから連絡がきた。

「人手が足りてなくてさ。スーパーの新店舗でレジ打ち、入ってくれない?」

Mくんは派遣会社の営業マンとして正社員で働いていた。
自分はフリーターで、ファミレスの合間なら時間もあるし、断る理由も特になかった。

「わかった、やるよ」

これが、ある意味“社会人編”の第一歩だった。


そのスーパーは、茨城ではそこそこ有名な企業だった。
新しくオープンする店舗ということもあり、現場はバタバタしていた。
新人スタッフばかりで、誰もが手探りの状態だった。

正直、レジ打ちをなめていた部分もあった。

「ピッてやって、お釣り出せば終わりっしょ?」

そんな感覚だった。

でも、現実は違った。

レジ打ちにはスピードと正確さ、接客力、柔軟な判断力が求められる。
そして何より、目の前のお客様に対して常に笑顔を絶やさず、丁寧に対応する必要がある。
何十人、何百人と接客する中で、常に気を張り続けるのは想像以上にきつかった。


ある日、ファミレスの師匠にこの話をした。

「串はさしてこなかったけど、地味にしんどいっす」

師匠は一言。

「レジ打ちも舐めんな。世界一のレジ打ちになってみい。周りの見る目が変わるから」

その言葉に火がついた。

どうせやるなら、徹底的にやろう。

レジに入る前に身だしなみを整え、名前の名札は磨いた。
お子さん連れのお客様には、目線を合わせて挨拶。
お年寄りには、荷物をカゴに移すのも丁寧に行った。
「ありがとう」を引き出すことにこだわった。


3ヶ月後、店内掲示板に貼られていた一枚の紙が目に入った。

「石川さんの接客がよかった。子供に対する姿勢も温かくてうれしかった。」

お客様からの“お声”だった。
自分の名前が書かれていた。

レジ打ちという、一見地味な仕事の中で、自分が誰かの記憶に残っていた。
誰かの「ありがとう」に、自分が関わることができた。

涙が出るほどうれしかった。


社会人生活のスタートは、スーツも履歴書も面接もなかったけれど、
“人と向き合うこと”を学べた、かけがえのない経験だった。

師匠の教え通り、
「仕事は作業じゃない。相手を感動させてこそ仕事になる」
その言葉を胸に、自分は一歩一歩、社会人として成長していくことになる。

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この記事を書いた人

石川信孝
茨城で建設会社を経営しています
工具はマイナスドライバー1本しか持っていません

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