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起業物語Re46 起業・経営編

目次

創業半年で一人きり——そこから始まった予想外の展開

創業して半年、気づけば会社には自分しか残っていなかった。
一緒に夢を描いて走り出した仲間は、気づけば誰もいない。
デスクに座っても、電話は鳴らない。打ち合わせもない。
事務所の静けさが、逆に心をえぐった。

「もう、この会社を続ける意味はあるのだろうか?」

そう思うこともあった。
でも、生活は待ってくれない。家賃も光熱費も食費も、容赦なくやってくる。
何をしてでも稼がなければ、日々は立ち行かなくなる。

暗闇の中を、まさに手探りで進む日々だった。


自分には何もなかった現実

独立してみて、改めて痛感した。
自分には「何もなかった」ということを。

会社員時代は“営業成績トップ”だと胸を張っていた。
でもそれは、会社という看板と仕組みに守られた中での話だった。
独立して看板が外れた瞬間、その営業力はほとんど通用しなかった。

新規事業をゼロから作り出す発想力もない。
仲間と組織力を活かすマネジメントもできない。
全部、自分ができると勘違いしていた。

自信は、過信だった。
その事実に気づいたとき、打ちひしがれるような無力感が襲ってきた。


捨てる神あれば拾う神あり

そんなある日、まさに「救いの電話」が鳴った。
発信者は、以前から付き合いのあったH社長。
彼は、かつて自分が立ち上げた上場企業の子会社を経営していて、当時、自分は彼の会社に仕事を流していた立場だった。

ちょうどその頃、H社長は会社を設立したばかり。
自分が仕事を回したことで、彼は順調なスタートを切ることができた。
そんな縁があったからこそ、今回の電話につながったのかもしれない。

受話器の向こうから聞こえてきたのは、予想外の提案だった。

「石川社長、もしご興味あればWi-Fiルーターを販売しませんか?」


当時は珍しかった“モバイルルーター”

「Wi-Fi…?」
正直、その言葉を聞いてもピンとこなかった。

当時はスマホもまだ普及しきっておらず、「どこでもインターネットができる」というモバイルルーターの存在は、世間的にも認知度が低かった時代だ。
説明を受けて、やっとイメージが湧いた。
ボタンひとつで、どこからでもネットにつなげる——それがこの機器の売りだった。

ただ、詳しいことはわからなくても、自分の中では「断る理由」がなかった。
というより、断る余裕すらなかった。
何かに賭けたい気持ちと、誰かに頼りたい気持ちが、背中を押したのだと思う。


即答した「やります!」

気づけば、自分の口からこんな言葉が出ていた。

「もちろんやります!」

それは、商品知識も市場動向も知らないままの即答だった。
ビジネスとして合理的な判断かと言われれば、まったくそうではなかったと思う。
けれど、あの瞬間の自分は、ただただ“動き出したかった”のだ。

半年間、足元をすくわれ続けた中で、ようやく見えた一本のロープ。
それが、Wi-Fiルーター販売の話だった。

この決断が、後の自分の人生を大きく変えるきっかけになることを、この時の自分はまだ知らない。

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この記事を書いた人

石川信孝
茨城で建設会社を経営しています
工具はマイナスドライバー1本しか持っていません

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