【起業物語】くすぶりの2軍生活 ~筋トレと屈辱とプライド~
筑波大学バスケ部に入部してからというもの、自分の居場所はずっとBチームだった。
バスケ部の中でもヒエラルキーが明確で、トップが1軍、次に2軍Aチーム、そして最下層が2軍Bチーム。
言ってしまえばBチームは“3軍”のような扱いで、将来の1軍候補とは呼ばれない位置。
そこに自分はいた。
だけど、腐るわけにはいかなかった。
誰よりも早く体育館に入り、誰よりも遅く体育館を出る。
夜22時を過ぎると、寮の共用風呂はもう閉まってしまっているので、陸上部のシャワーをこっそり借りて帰るのがルーティンだった。
筑波大学は全国屈指のスポーツ大学だけあって、トレーニング設備は本当に充実していた。
ジムはプロ並み。筋トレ器具は一通り揃っていて、やる気次第でどこまでも鍛えられる環境が整っていた。
小柄な自分に必要だった“武器”
身長は173cm、体重はわずか55kg。
大学の舞台では圧倒的に“小さくて軽い”。
高校ではポイントガードとして試合をコントロールし、トリッキーな動きで相手を翻弄するプレースタイルだった。
でも、大学の世界はまるで違った。
体の大きさ、速さ、パワー、すべてが規格外。
このままじゃ到底通用しない。
だから自分は、勝負するための“新たな武器”を磨くことにした。
ひとつは3ポイントシュート。
もうひとつは、ドリブルで一瞬の隙を突いて切れ込む瞬発力。
3Pの射程を伸ばすには、単純にシュートの筋力が必要だった。
そして相手のリズムをずらして抜くには、100mを速く走るようなスピードよりも、
「バッシュ1個分だけ先に足を出せる力=瞬発力」が鍵だった。
だから、自分は毎日異なる部位の筋トレメニューを組んで、コツコツと鍛えていった。
少しずつ実感する“成長”
筋肉はすぐにはつかない。
でも、地道な努力の先に確かな変化があった。
3Pシュートが楽に届くようになった。
1歩目のドリブルで、少しだけ相手より先に仕掛けられるようになった。
ジャンプも伸びて、1回だけ、リングに触れたこともあった。
あの瞬間の手に感じた鉄の冷たさは、今でも忘れられない。
「ここまできたんだな」
そんなささやかな達成感が、自分のモチベーションになっていた。
屈辱のひと言
そんなある日のこと。
いつものように筋トレをしていた自分は、ベンチプレスで110kgに挑戦していた。
あと数センチ。
どうしても持ち上がらない。
苦しみながら力を込めていたその時、隣でトレーニングしていた推薦組の関西人が言い放った。
「こんなん上がらんなんて、バスケも筋トレもダメダメやな」
彼は同じ1年生。
それでいて1軍のレギュラー。
関西特有のノリもあるのだろう。
でも、自分にとっては“ゴミのように扱われた”衝撃だった。
その場にいた他の仲間は笑っていた。
けれど、自分の中では笑えなかった。
正直、涙が出るほど悔しかった。
この言葉、忘れない
だけどその言葉は、自分の火に油を注いだ。
あの日から、自分はより本気になった。
「絶対に見返してやる」
「ここで終わるような人間じゃない」
そう心に誓った。
ベンチプレスは120kgを超えるようになった。
3Pの成功率も上がった。
1軍にはまだ届かなかったけれど、自分の中で確実に“前進”している実感があった。
努力は、すぐに報われない。
でも、努力している人間だけが、自分の“弱さ”と向き合える。
あの時の関西人のひと言。
今でも覚えているし、正直忘れるつもりもない。
だけど、あの言葉があったから、今の自分があるのだと思う。

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