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母の話

「うちの母は、たぶん本物です。」

母はすごい。
もう、ほんとにすごい。
何がすごいって、天然ぶりが桁違いなのだ。
その明るさ、前向きさ、そして“なぜそうなった!?”と突っ込まずにはいられない日々の言動。

笑えるのか呆れるのか、いや、たぶんどちらもなのだけど、
母の存在そのものが、家族の太陽みたいになっていたのは間違いない。


●即席、ごきぶりのお墓を築く母

ある日、母は友人と蕎麦屋に行った。
なかなか年季の入ったお店だったらしく、風情があるというよりも「古い」「汚い」に近い店構え。
そして事件が起きた。

なんと、蕎麦の中にゴキブリがいたらしい。

……いや、そんなことあるか?って話だけど、
母はそのゴキブリを発見したにもかかわらず、店員に何も言わず、
そばをかぶせて“ごきぶりのお墓”を作ったのだそう。

「友人に迷惑かけたくなかったから…」と。

いやいやいやいや。
そこは言おうよ。せめて店員に。
なぜそばで埋葬して終わりにしたのか、本当に謎すぎる。


●自転車の記憶がバグっている

母は駅まで自転車で通勤していた。

ある日、仕事を終えて帰宅し、玄関前で違和感に気づいた。
「なんか…これ、私のチャリじゃない…?」

母の自転車は緑色、ママチャリハンドル、24インチの小ぶりな一台。
だがその日乗って帰ってきたのは、黒くてスポーティーな26インチ、一文字ハンドルの自転車。

どう見ても違うだろうに、家に着くまで気づかない。
そもそも、鍵が開いたのが奇跡。
でもって、そのまま駅まで戻って、困っている若い男性を見つけ、母はこう言った。

「これですか?見つかってよかったですね」

いや、あなたが持ってきたんやがな。
盗んでおいてそのセリフ、完全にプロの犯行。いや、もちろん故意じゃないんだけど。
でもそれを笑顔で言えるあなたは、やっぱり本物。


●ミクソとゾマホンの世界

母は言い間違いが多い。

SNSの「Mixi」のことを「ミクソ」って言う。
Amazonのことを「ゾマホン」って言う。

もう、どこからどうやってその言葉が出てきたのか本当に不明。
言われすぎて、こっちが「あれ、ほんとはミクソだったっけ?」と混乱してくるほどだ。
ちなみに「YouTube」のことは「ユーチョンブ」と言っていた。おそらく韓流の影響だ。


●背中に靴下、装備済み

これが一番びっくりした話かもしれない。

ある日、母は仕事に向かうべく電車に乗っていた。
その日、背中に違和感があったらしい。

ふと背中を手で触ってみると、そこには……

靴下。

そう、母は靴下を背負って通勤していたのだ。
しかも、ちゃんと足にも靴下を履いていたというのだから意味がわからない。

「どうしてそうなったの?」と聞いても、
「わかんない、気づいたら背中にいた」と。

妖怪か。


●そんな母から、僕は生まれました

天然で、明るくて、突っ込みどころ満載で。
「この人、なんでこうなるんだ?」と毎回思いながら、
それでもやっぱり、母のことは心から尊敬している。

人を笑わせる才能も、場の空気を明るくする力も、
きっと母の天性のものなのだと思う。

僕が落ち込んでいるときも、母のアホみたいな話で何度救われたかわからない。

そんな母から、僕は生まれました。

…将来、背中に靴下を背負っていないかだけは、気をつけようと思ってます。

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この記事を書いた人

石川信孝
茨城で建設会社を経営しています
工具はマイナスドライバー1本しか持っていません

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