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起業物語Re30 社会人編

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転機と、人生を変える一本の提案書

順風満帆──まさに、そんな言葉がぴったりだった。

派遣会社での仕事は多忙を極めていたが、部下にも恵まれ、クライアントからの評価も高く、やりがいに満ちていた。
充実という言葉を全身で感じながら、日々を走り抜けていた。

あれから月日が流れ、自分は27歳になっていた。

そんなある日、大きな転機が訪れた。


発端は、いつも通りの業務の中で訪れた一本の電話だった。
相手は、自分が派遣で入っていた大手スーパーの人事担当の方。

「実はね…ちょっと、困ってることがあってさ…」

雑談のようなトーンから始まったその話。
内容はこうだった。

「うちのスーパー、県内だけで150店舗以上あるんだけど、各店舗がそれぞれ違う派遣会社と契約してるから、もう、管理がぐちゃぐちゃでさ。店長の要望も派遣会社によって伝わり方が違うし、肝心のスタッフも足りてない。正直、現場は混乱してるんだよね…」

なるほど。確かに現場に入っていれば、そういった“ほころび”は肌で感じていた。
情報のズレ、責任の所在、教育方針の違い…たくさんの“統一されていない”が、そこにはあった。


人事の方はぼやき交じりに話していたが、自分の中ではピンと来るものがあった。

「これは…チャンスだ」

根拠はない。でも、何かが動き出す予感がした。

そこで自分はこう切り出した。

「少しだけ、お時間いただけませんか?数日後にご提案書をお持ちしたいんです」

人事の方は「え?…うん、いいよ」と驚いたような顔で返してくれた。


自分の中で何かが燃えはじめた。

けれど、問題がひとつあった。
自分はパソコンが壊滅的に苦手だったのだ。

資料をつくるのに、文字のフォントを変えるだけで30分。
表を作ろうとすれば、Excelとワードの間で行ったり来たり。
人生でこれほどまでにPCとにらめっこした日はなかったかもしれない。

(※このパソコンアレルギーの話は、別のストーリーでたっぷり書こうと思います)


そうして3日間、睡眠を削りながらもなんとか完成させた提案書。
内容は、シンプルだった。

「いっそのこと、派遣会社をつくっちゃいましょう」


今思えば少し突飛だったかもしれない。

でも、自分なりに現場を知り、人を育て、スタッフの声を聞いてきた自負があった。
統一感がないなら、いっそ一つの会社でやればいい。
教育も運営も採用も、自分が設計すれば現場はきっと変わる。

「派遣会社をつくる」という提案は、派遣という仕組みそのものに一石を投じる挑戦でもあった。


提案書を持ち込んだ日、人事担当の方は黙ってそれを読み終えた。

そして、ゆっくりと顔を上げて、こう言った。

「…君、本気なんだね」

その瞬間、自分の中のスイッチが入った。
もう後戻りはできない。そう腹をくくった。

これが、自分の人生を根本から変える、はじまりの一歩だった。

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この記事を書いた人

石川信孝
茨城で建設会社を経営しています
工具はマイナスドライバー1本しか持っていません

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