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起業物語Re51 起業・経営編

全国展開のはじまり

東北で地道にモバイルルーターの販売を続けながら、口コミで広がった「タブレット体験会」は月2回のペースで福島県内の新聞販売店で開催されるようになっていた。

参加してくれる高齢者の方々は回を追うごとに増え、会場は笑顔と驚きであふれていた。「こんな便利なものがあったのか」「孫とメールしてみたい」といった声を聞くたびに、自分自身もやりがいを感じていた。モバイルルーターをただ“売る”のではなく、ITを通じて人の生活を豊かにする手助けができている――そう思えた瞬間だった。

少しずつ仲間も増え、気づけば3人で営業活動をまわすチームになっていた。孤独だった立ち上げ期を思えば、本当にありがたいことだった。


本部からの視察

そんなある日、新聞販売店のマネージャーから声がかかる。
「新聞社本部の人が興味を持っていて、見学したいと言っている」

自分は迷わずOKした。誰が相手であろうと、やることは変わらない。とにかく「笑い」を交えて楽しい時間を作り、高齢の方々にタブレットを身近に感じてもらうこと。それが自分のスタイルだった。

見学当日、本部のお偉いさんが会場に来ても、空気を固くすることはしなかった。会場はいつものように笑いとユーモアで包まれていた。参加者が楽しそうに声を上げる光景を目の当たりにしながら、自分も全力でしゃべり倒した。


全国展開の打診

体験会が終わったあと、本部の方から声をかけられた。
「これを全国に広げよう!」

一瞬、耳を疑った。全国の新聞販売店でこの催事をやる――スケールの大きさに鳥肌が立った。これまで東北の一角で細々とやってきた取り組みが、一気に全国展開になる。夢のような話だった。

ただ、その言葉の裏には、とてつもない重圧が潜んでいた。規模が大きくなればなるほど準備も責任も膨れあがる。現場をまわすのは自分たち数人。どれだけの負荷がのしかかるか、想像するだけで胃が痛くなるような気持ちになった。


地獄のはじまり

もちろん「やります」と即答した。断る理由なんてなかったし、このチャンスを逃せば二度と巡ってこない気がしたからだ。だが、ここからが本当の試練だった。

・全国規模のスケジュール調整
・各地の販売店との交渉
・機材やモバイルルーターの手配
・タブレット体験用のプログラム設計
・講師としての自分の準備

やるべきことは雪だるま式に膨れ上がり、休む間もなく動き回る日々が始まった。

「全国に広げよう!」――その言葉は希望であると同時に、まさに“地獄の宣告”でもあった。

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この記事を書いた人

石川信孝
茨城で建設会社を経営しています
工具はマイナスドライバー1本しか持っていません

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