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起業物語Re56 起業・経営編

親からの電話 ― Sくん解雇の後日談

Sくんを解雇して、ようやく会社に落ち着きが戻るかと思っていた。しかし、それで終わりではなかった。今度は父親からの執拗な電話が始まったのだ。


目次

父親からの執拗な要求

電話口で父親は繰り返した。

  • 「ぬれぎぬだ」
  • 「間違えて持ち帰っただけだ」
  • 「たかが充電器一つで解雇はおかしい」
  • 「息子が将来稼ぐ半年分を払え」

さらに脅し文句まで飛び出した。

「おれは右翼に知り合いがいる。会社の前に街宣車を呼んで騒いでもいいんだぞ」

最初は淡々と聞いていたが、右翼や街宣車の話になったあたりから自分も頭に血が上った。会社はテナントを借りている身分であり、もし街宣車でも来れば他の入居者に迷惑がかかる。


ファミレスでの直接対決

怒りを抑えつつ自分は提案した。
「いったん落ち着いて会ってお話ししましょう。息子さんも一緒に来てください」

翌日、オープンな場としてファミレスを選び直接対話の場を設けた。ところが現れたのは父親だけ。肝心のSくん本人は姿を見せなかった。

「なぜ当事者のSくんが来ていないのですか?意味がないですよね」
そう問いただすと、父親は吐き捨てるように言った。

「てめー必要ねーだろ。おれが来てんだから」

「なぜ解雇になったかを、本人の理由と自分の立場から聞かないとすり合わせになりません」
そう伝えても、父親は耳を貸さない。

「理由なんてどーでもいい。不当解雇だ。金よこせ」


証拠を突きつける

「お金を請求する正当な理由をおっしゃってください」
と自分が冷静に切り返すと、父親は逆上したように怒鳴った。

「ばかかお前は!何度も話してるだろ。不当解雇だっつってんだよ!」

その瞬間、自分は静かにカバンから書類を取り出した。
「それではこちらの用紙とボイスレコーダーを確認してください」

そこには、Sくん本人が書いた始末書があった。お客様の充電器を意図的に盗み、解雇に異存がないことを事細かに記載している。さらにボイスレコーダーには、Sくんが自供した音声と、父親が電話で罵声を浴びせながら金銭を要求する様子まで録音されていた。

「ちなみに今の音声も録音しています。恐喝と脅迫にあたりますので、このまま警察に届けることも可能です」

そう告げると、父親の態度は180度変わった。


態度の急変と幕引き

「まー、おれも口が悪かったな…。息子がやったことは悪いことだ。帰ったらちゃんと指導しておく。ドリンク代はおれが払うから、今日は失礼する」

そう言い残し、父親はファミレスを後にした。


経営者としての学び

この一件は、自分に強烈な教訓を残した。

  • 嘘や甘えを繰り返す人材は、いずれ必ず問題を起こす。
  • 採用は本人だけでなく、家庭環境や価値観まで含めて見極めなければならない。
  • 感情的なやり取りでも、冷静に証拠を揃えたうえで対処すれば状況をひっくり返せる。

Sくん本人だけでなく、その親までもが問題を引き起こしたことで、人材採用のリスクを骨身に染みて理解した出来事だった。

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この記事を書いた人

石川信孝
茨城で建設会社を経営しています
工具はマイナスドライバー1本しか持っていません

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