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起業物語Re60 起業・経営編

暗黒時代の始まり ― 右腕を失って考えたこと

経営を続けていくうえで、仲間の存在は何よりも大きい。とりわけ右腕ともいえる存在を失ったときの衝撃は、自分にとって計り知れないものだった。今回は、自分が実際に経験した「No2の離脱」と、その後に訪れた暗黒時代について書いてみたい。


目次

右腕を失った日

No2として6年間共に歩んできたF氏から、ある日突然こう告げられた。
「社長、もう未来が見えません。やめさせてください。勘弁してください。」

その瞬間、自分は言葉を失った。これまで文句も言わず、必死に会社を支えてくれたF氏が発する言葉には、覚悟と重みがあった。全国を一緒に回り、営業も生活も共にしてきた仲間だっただけに、胸にぽっかりと穴が空いたような感覚だった。


気づけなかったこと

F氏は、表立って不満を言うことはなかった。しかし本当は、賃金面でも生活面でも厳しい状況に置かれていたらしい。特にお父さんが病気になり、お金が必要だったのに、会社の経営状況を考えて言い出せなかったという。さらに、営業活動が中心だったF氏にとって、自分のように講師として直接お客様に喜んでもらう機会が少なかったことも「やりがいを感じられなかった」要因になっていた。

自分は、晩御飯をおごったり、ホテルは朝食付きにしたり、たまに飲みに誘ったり――そんな表面的なフォローで十分だと思い込んでいた。だが、従業員が本当に欲していたのは「会社の未来を見せてくれるリーダー」だったのだ。


人が辞めていく現実

F氏の離脱をきっかけに、これまで入社した多くの従業員の顔が頭をよぎった。結局、自分は「長く働き続けてもらう仕組み」や「キャリアの展望」を示すことができなかったのだ。

仲間が辞めていくたびに、心のどこかで「仕方ない」と片付けてきた。しかし、右腕が去ったことで初めて、自分の経営の甘さを真正面から突き付けられた気がした。


暗黒時代へ

右腕を失った後、自分の心は揺らぎ続けた。
「会社をやり続ける意味はあるのか」
「誰のためにこの会社を動かしているのか」

売上はじわじわと減少し、資金繰りの不安も増していった。従業員に未来を語ることもできず、自分自身も情熱を失いかけていた。自信は削られ、現場でも笑顔が減った。

この時期を振り返ると、本当に「暗黒時代」と呼ぶにふさわしい。経営者としての自分が試される時間だったと思う。


今になって思うこと

従業員に未来を見せること。
長く働き続けられる環境をつくること。
それが経営者の最も大切な役割だと、No2の離脱を通じて痛感した。

暗闇の中にいたからこそ、次に何をするべきか少しずつ見え始めた。資金繰りの改善だけではなく、長期的なビジョンを示し、仲間と未来を共有すること。それができなければ、いずれまた同じことを繰り返すだろう。

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この記事を書いた人

石川信孝
茨城で建設会社を経営しています
工具はマイナスドライバー1本しか持っていません

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