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起業物語Re69 再起編

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社長は辞められるんだ、という衝撃

入社して半年ほどが経ったころ、
社内の空気が一変する出来事が起きた。

最初は、何が原因なのかまったく分からなかった。
ただ、会社全体に妙な緊張感が漂い始めていた。

原因は――
夫である社長と、代表取締役である奥さんの大喧嘩だった。


突然届いた一本のLINE

ある日のこと。
社内のグループLINEに、一本のメッセージが流れた。

「皆様、お世話になります。
社長の〇〇です。
一身上の都合により■■会社を退職いたします。
皆様の今後のご活躍をお祈り申し上げます。」

一瞬、何が起きたのか理解できなかった。

社員全員が同じ画面を見つめ、
「え?」「どういうこと?」
という空気が一斉に広がった。

社長が、辞める?

正直な感想はそれだった。
そもそも、社長って辞められるんだ――
そんなことを本気で考えたのは、このときが初めてだった。


代表から聞いた“喧嘩の真相”

後日、代表である奥さんから事情を聞いた。

どうやら、夫婦間での口論がエスカレートする中で、
代表がこんな言い方をしたらしい。

「石川はこう言ってた」
「石川は、この案のほうがいいって言ってた」

それが決定打だった。

社長は激昂し、こう言い放ったという。

「だったら石川と会社やれ!
俺はもう辞める!」

……完全に巻き込み事故だった。


半年で“目立つ存在”になっていた自分

振り返ると、その時点で自分は入社して約6か月。
負けず嫌いな性格もあり、必死に勉強し、
半年が経つころには、現場の知識も身につき、
クライアントとも一人で会話ができるレベルになっていた。

周囲の社員からも、
「石川に聞けば分かる」
といった空気が少しずつ生まれていたと思う。

そして同時に、
それを面白く思っていない社長の気配も、
正直、感じてはいた。

ただ、自分は自分のペースで仕事をしていただけで、
誰かと競うつもりも、出しゃばるつもりもなかった。

それでも、
「社長 vs 石川」
という構図を、社長自身が作りたがっているように見えた。


辞めたはずの社長が、毎日会社にいる

さらに奇妙だったのは、
**「退職宣言をした社長が、その後も毎日会社に来ていた」**ことだ。

なぜか普通に出社し、
当時No2だった社員に向かって、

「全部お前に引き継ぐから」

と、社長代行をやらせるような雰囲気を出していた。

No2の彼は、
いきなり大量の事務処理と判断を押し付けられ、
見るからに追い詰められていった。

そんな彼に対し、社長は容赦がなかった。

「こんなこともできないのか」
「これじゃ会社が潰れるぞ」

罵声が飛び交う日々。

一方で、自分はというと――
喧嘩の原因が自分にあるという理由で、
完全にフルシカトされていた。


社員に突きつけられた“踏み絵”

社長の退職宣言から1か月ほど経ったころ、
自分以外の社員が呼び出され、飲み会が開かれた。

後から聞いた話だが、
そこで社長は、こんなことを言ったらしい。

「俺についてくるのか」
「石川についていくのか」
「はっきりしろ」

まるで踏み絵だった。

正直に言うと、
その頃の自分は、蚊が腕に止まった程度の感覚だった。

目の前の業務が山ほどあり、
いちいち感情に振り回されている余裕もなかった。

それでも、
社長と周囲はどうしても
「社長 vs 石川」
という構図を作りたがっているように見えた。


そして、何事もなかったかのように

結局――
退職宣言から2か月後。

社長は、何事もなかったかのように復帰した。

LINEもなければ、説明もない。
ただ、いつも通りの顔で、
いつも通りの業務が再開された。

この一連の出来事で、
自分の中に、はっきりとした感情が芽生えた。

「この会社を、いずれ辞めるかもしれない」

感謝していることも多い。
学ばせてもらったことも確かにある。

だが同時に、
ここに長く居続ける未来が、
初めて見えなくなった瞬間でもあった。

――この会社で、
自分はどこに向かうのだろうか。

そんな問いを胸に抱えながら、
日々の業務をこなしていくことになる。

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この記事を書いた人

石川信孝
茨城で建設会社を経営しています
工具はマイナスドライバー1本しか持っていません

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