MENU

起業物語Re70 再起編

窃盗事件 ―― 嘘が現実を壊すとき

この会社には、本当にいろいろな人がいた。
今思い返しても、まるで人間図鑑のような職場だったと思う。

常に足のにおいを漂わせている人。
常に誰かにキレていないと気が済まない人。
自分を大きく見せることだけが人生の目標のような人。

どれも強烈だったが、社会勉強という意味では学ぶことも多かった。
だが、その中でも群を抜いて厄介な人間が一人いた。

それが――
**「嘘をつく人間」**だった。

嘘は、ただの性格の問題では済まされない。
職場においては、信用を壊し、人を巻き込み、やがて現実そのものを破壊する。
そのことを、身をもって知ることになる。


嘘つきのA君

その人物を、ここではA君とする。
A君は、息をするように嘘をつく人間だった。

しかもその嘘は、子どもが考えそうなものから、もはや意味不明なものまで幅広い。

代表的なものを挙げると――

・小学生のころ、50mを4秒を切って走れた
 → それは100mの世界記録レベルだ。

・あと少しでジャイアンツにスカウトされるところだった
 → 本人は卓球部。

・笠間焼の文化は、自分の祖父が作り上げた
 → いくら調べても、そんな話は出てこない。

・実家でドーベルマンを100匹飼っている
 → 餌代だけで何千万かかる計算になる。

・東京タワーは俺が建てた
 → 何歳だ。

・武道館でコンサートを開いたことがある
 → 本人はドとレの音階でしかグレイを歌えない。

もはや突っ込む気力も失せるレベルだった。

最初は冗談だと思っていた。
だが、彼はそれを真顔で言う
しかも話がどんどん盛られていく。

プライベートの話だけなら、まだ笑って済ませられた。
だが問題は、仕事のミスまで嘘でごまかすことだった。


管理職としての立場

当時、A君は自分よりも前から会社に在籍していた。
だが、役職としては自分の方が上で、管理職の立場だった。

そのため、A君のついた嘘の後始末をするのは、決まって自分だった。

・A君の説明と事実が違い、クライアントに謝りに行く
・現場でのミスを、なぜか自分が頭を下げて回る
・「聞いていない」「やったつもりだった」という言葉の尻拭い

正直、何度も心が折れかけた。

だが、最も衝撃的だったのは、ある事故だった。


高所作業車の事故

ある現場で、高所作業車を使用していた際のことだ。
A君は、サイドブレーキをかけ忘れた

その結果、作業車は坂道を動き出し、
近くの民家のフェンスを派手に破壊してしまった。

幸い、人的被害はなかった。
だが、状況としては一歩間違えれば大事故だった。

ところがA君は、最後までこう言い張った。

「サイドブレーキは引きました」
「これは車の故障です」

それだけではない。

「自分は壁と車の間に入り、民家を守ろうとした」
「そのとき、弾き飛ばされた」

まるで映画のワンシーンのような武勇伝を語り始めた。

だが後日、現場近くにいたガードマンの証言が入った。

「A君は、ただ茫然と立ち尽くしていました」

事実は、それだけだった。

この事故が原因で、その現場からは**出入り禁止(NG)**が出た。
クライアント対応、謝罪、修繕の調整――
すべて、自分が引き受けることになった。


そして、次の事件へ

このとき、はっきりと感じた。

嘘は、必ず周囲を巻き込む。
そして、嘘をつかない人間が、その代償を払わされる。

被害が大きくならなかったことだけが救いだった。
だが、これで終わりではなかった。

この後、A君は
会社の信用を根底から揺るがす、さらに大きな事件を起こすことになる。

それは、
「もうフォローでは済まされない」
そんな一線を越える出来事だった。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

石川信孝
茨城で建設会社を経営しています
工具はマイナスドライバー1本しか持っていません

Xアカウント:https://x.com/oasistech43
Facebookアカウント:https://www.facebook.com/nobutaka.ishikawa
インスタアカウント:https://www.instagram.com/no.bu5956

コメント

コメントする

目次