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起業物語Re6 生い立ち

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あの1本のシュートが、すべてを変えた

中学2年に進級した頃、自分はバスケ部である程度の力をつけてきていた。
基礎は固まり、プレーにも自信がつきはじめていた。
しかし、周囲のレベルも高く、運動神経の良い部員たちがそろっていたため、レギュラーには手が届かなかった。

自分の役割は「シックスマン」――いざという時に交代で出場し、チームを支える存在。
目立つことはなかったが、試合に出してもらえる喜びが何よりも大きかった。

うちの中学にはミニバスの経験者が誰もおらず、部員全員が中学からのスタート。
だからこそ、努力と成長でチームが少しずつ力をつけていく過程には、どこか“仲間意識”のようなものが強く芽生えていた。
特にレギュラーの5人は、それぞれが異なる持ち味をもった、まさにチームの中核。
自分から見ても、本当に頼もしく、カッコいい存在だった。

そんな中、秋の大舞台「都下大会」が始まった。
およそ200校が参加するこの大会で、自分たちは快進撃を見せた。
あれよあれよという間に勝ち進み、ついにベスト8入りを果たす。

顧問の先生からは、「あと1勝すれば立川の泉体育館。準決勝・決勝がそこで行われる。スカウトも来る」と告げられた。
つまり、勝てばバスケ推薦での進学のチャンスが出てくるということだった。

準々決勝の相手は、秋川東中。
都内でも有名な名門校で、ミニバス経験者がほとんどという強豪チームだった。
だが、前半はうちのチームが粘り強く戦い、なんと残り1分で10点のリード。
ベンチも応援席も歓声に包まれ、「これはいける」と誰もが思っていた。

そのときだった。
顧問が自分を呼んだ。

「出ろ。シュートは打たずに時間を稼げ。それだけでいい。」

それは、初めて明確に「作戦」を与えられた交代だった。
普段の自分なら「とにかく頑張ってこい」で終わるようなタイミングだったが、今回は明確な指示。
「時間を稼ぐだけ」。
それだけの役割だった。

ただ、心は異様に緊張していた。
体育館のざわめきが遠くに聞こえ、足が少し震えていた。

そして、コートイン。
数回パスが回り、ついに自分の手元にボールが来た。
その瞬間、自分はノーマークだった。

「今だ」と、思ってしまった。

気づけば、3ポイントラインの外からシュートフォームに入っていた。
頭では「打つな」とわかっていたはずなのに、気持ちが先に動いていた。
まるでスローモーションのように、自分の手から放たれたボールが宙を描く。

……が、次の瞬間。
相手チームのガードが跳び上がり、そのボールをブロック。
鋭く弾かれたボールはそのまま速攻に繋がり、相手に2点を許してしまった。

会場の空気が一変する。
時間を稼いで終えるはずだった前半は、8点差に縮まり終了。

ハーフタイム、自分はチームメイトから、そして顧問から、叱責を受けた。
「なんで打った?」
「言ったよな、時間稼げって!」

何も言い返せなかった。
完全な作戦ミス。完全な独断。完全な判断ミス。

後半、チームは流れを完全に失った。
秋川東中の勢いは止まらず、反撃され、逆転され、そのまま敗戦。
スカウトの夢も、泉体育館の舞台も、すべてが遠ざかっていった。

あの試合が終わってから、自分はしばらくの間、何も手につかなかった。
あの一瞬の判断が、5人の仲間たちの将来を変えてしまった。
「なんであのとき…」と、毎日のように後悔が頭をよぎった。

だが、この失敗は、自分の人生を大きく変えた。

“勝手な判断が、大切な人たちの努力を台無しにすることがある”
“約束された役割を守ることも、チームにおいては重要な仕事だ”

そのことを、中学生という若さで身をもって痛感した。

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この記事を書いた人

石川信孝
茨城で建設会社を経営しています
工具はマイナスドライバー1本しか持っていません

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