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起業物語Re15 生い立ち

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空に舞ったあの日──筑波大学合格発表

3月のある日。
正確な日付は忘れてしまった。
けれど、その日が自分の人生を変えた日であったことだけは、今でも鮮明に覚えている。

筑波大学・体育専門学群の合格発表日

それは、あらゆる苦しさと不安を背負って迎えた、運命の日だった。


揺れるバス、揺れる心

当時はまだ、ネットで合格発表を見る時代ではなかった。
スマートフォンも普及しておらず、合否を知るには現地に足を運ぶしかなかった。

東京から茨城・つくばへ、高速バスに揺られて向かった。

正直、スポーツテストにも小論文にも「これだ」という手応えはなかった。
バスの中でも、不安と期待が入り交じって胸の鼓動は早まるばかり。

それを少しでも落ち着かせようと、窓の外に流れる茨城ののどかな風景をぼんやりと眺めていた。
でも、景色はまったく頭に入ってこなかった。


筑波大学のキャンパスへ

初めて降り立った筑波大学のキャンパス。
自分は入学して初めて知ることになるが、筑波大学は“ひとつの街”のように広大な敷地を誇る。
大学構内にはバスが走り、施設ごとに名前がついているようなスケールだった。

当然、そんなことは事前に知らなかった。
今のようにGoogleマップで検索するわけでもなく、情報も限られていた。
自分はただ、歩いて合格発表の場所を目指した。

ゆっくりと近づくにつれ、ざわざわと人の声が聞こえ始めた。
すでに合格を知った受験生たちが、サークルの先輩たちに胴上げされたり、握手されたりして盛り上がっていた。

「この中に、自分も入れるのだろうか」
心がそっと問いかける。


ボードに並ぶ番号、そして…

人の波をかき分け、ようやく合格発表の掲示板の前にたどり着いた。
そこには、びっしりと受験番号が並んでいた。

自分の番号は暗記していた。
だから、目を凝らしながら上から順に確認していった。
すると――

「あった」

ほんの一瞬、息が止まった。

もう一度見直す。
目をこすって、もう一度確認する。
たしかに、自分の番号があった。

これまでの努力、苦しかった受験生活、バスケと勉強の両立。
すべてが、報われた瞬間だった。

その時、頭が真っ白になった。

高校の合格発表も嬉しかったが、今回はそれ以上に、自分の手で勝ち取った感覚があった。
誰も自分を応援してくれなかった日々も思い出しながら、自然と涙がこぼれそうになった。


空に舞った自分

その様子を見ていたのか、近くにいたアメフトサークルの先輩たちが声をかけてくれた。

「おー!おめでとう!胴上げしようか!」

気づけば、自分は宙を舞っていた。

ゴツい先輩たちの腕に担ぎ上げられ、青空に向かって何度も放り上げられた。
その青空は、これまで見たどんな空よりも高く、まぶしく、美しかった。

あの一瞬、空中で身体が止まったような感覚すらあった。

後から知ったことだが、その時の胴上げの写真が、筑波大学の広報紙に掲載されていた。


夢の第一歩

帰りのバスや電車の記憶はまったくない。
放心状態のまま東京に戻り、家に着いても現実感がなかった。
夢を見ているような、バスケのプロにでもなったかのようなふわふわとした気持ちで、何日かを過ごした。

「夢に向かって、ようやく第一歩を踏み出した」
そんな高揚感と達成感に包まれていた。

だが――

そのときの自分は、大学で待ち受けている“本当の試練”をまだ知らなかった。
この先、自分の中で大きく何かが崩れ、変わっていくことになる。

でもそれは、また別の話。

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この記事を書いた人

石川信孝
茨城で建設会社を経営しています
工具はマイナスドライバー1本しか持っていません

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